ご自身の人生の終焉に備える「終活」の一環として、エンディングノートを準備される方が、近年とても増えています。 ご自身の葬儀やお墓についての希望、大切な方へのメッセージなど、そこに記される内容は様々です。
しかし、その中で、意外と見落とされがちな項目があるのをご存知でしょうか。 それは、ご自身の死後、何年にもわたって営まれる**「法事(法要)」**についてです。
「いつまで、どんな規模で、誰を呼んでほしいのか」
その希望を書き記しておくことが、実は、遺されるご家族を、未来の大きな悩みや、時には争いから救う、最高の道しるべとなるのです。 今回は、お寺の視点から、ご家族を想うエンディングノートの「法事」に関する書き方のヒントをお伝えします。
なぜ「法事」について、書き残すことが大切なのか?
そもそも、なぜ法事の希望を書き残すべきなのでしょうか。それには、3つの大きな理由があります。
- 1.家族間のトラブルを防ぐため 「一周忌は盛大にやったけど、三回忌はどうする?」 「どこまでの親戚を呼べば、角が立たないだろうか?」 法事の規模や、誰を招待するか、といった問題は、ご兄弟やご親族の間で、意見が分かれやすい、非常にデリケートな問題です。あなた様の明確な意思が記されていれば、ご家族はそれに従うことができ、無用な対立を避けることができます。
- 2.遺される家族の、精神的な負担を軽くするため 大切なあなたを失った悲しみの中、ご家族は「故人は、どうして欲しかっただろうか」と、手探りで答えを探さなければなりません。その推測は、時に大きな精神的負担となります。エンディングノートに希望が書かれていれば、ご家族は「これで、お父さん(お母さん)も喜んでくれるはず」と、確信をもって、安心して供養に臨むことができます。
- 3.ご自身の「想い」を、かたちにするため 「あまり大げさにはせず、内輪だけで静かに偲んでほしい」あるいは、「お世話になった友人にも、ぜひ集まってほしい」。法事は、あなた様が人生を締めくくった後の、ご自身のあり方を示す、最後の自己表現の場でもあります。その希望を、明確に伝えておくことは、ご自身の尊厳を守ることにも繋がります。
エンディングノートに書き留めておきたい、法事に関する項目
では、具体的にどのようなことを書けば、ご家族は迷わないのでしょうか。以下の項目を参考に、ぜひ書き出してみてください。
- ① いつまで法要を営んでほしいか 一周忌、三回忌、七回忌…と続く年忌法要を、いつまで行ってほしいか。「七回忌までを希望します」「三十三回忌(弔い上げ)まで、できる範囲でお願いします」など、具体的な希望を記しましょう。
- ② どのくらいの規模で行ってほしいか 「家族だけで、ささやかに行ってください」「親戚一同にも、声をかけてほしい」など、希望する法事の規模感を書いておくと、ご家族はとても助かります。
- ③ 誰に参列してほしいか 特に「この人には、必ず声をかけてほしい」というご友人などがいらっしゃる場合は、その方のお名前と連絡先をリストにしておくと、大変親切です。
- ④ お願いしたいお寺(菩提寺)について ご自身の法要を、どこのお寺にお願いしたいか。お寺の名前、宗派、連絡先を明確に記しておきましょう。「愛知県小牧市 祥雲寺」というように、誰が見ても分かるように書いておくことが重要です。
- ⑤ その他(お経や、お斎など) もし、好きだったお経の一節や、法事の後の会食(お斎)について、何か希望があれば、それも書き添えておくと良いでしょう。
大切な家族への、メッセージも添えて
これらの事務的な希望と共に、ぜひ、ご家族へのメッセージを添えることをお勧めします。 「私の法事が、皆さんの負担にならないことを、一番に願っています。たまに集まって、私のことを笑顔で思い出してくれれば、それで十分です」 このような、あなた様の温かい想いが一言添えられているだけで、ご家族は、その希望を、愛情のこもった「最後の願い」として、喜んで受け止めてくれるはずです。
おわりに
エンディングノートに記す法事の希望は、遺されるご家族への、最後のラブレターです。 それは、ご家族を未来の悩みから守り、あなた様亡き後も、家族の絆を円満に保つための、深い愛情表現に他なりません。
私たち祥雲寺では、終活に関するご相談も、随時お受けしております。 エンディングノートの書き方で迷われたり、ご自身の法要について、何かお尋ねになりたいことがございましたら、どうぞ、いつでもお気軽にお声がけください。