大切なご家族を亡くされ、深い悲しみの中、遺品を整理していると、一冊のノートが見つかることがあります。故人が、自らの人生の終幕のために書き遺した、「エンディングノート」です。
震える手でページをめくると、そこには、葬儀やお墓のこと、そして、ご自身の「法事」についての希望が、丁寧な文字で綴られている。 その想いの深さに、改めて涙がこみ上げると同時に、「この大切な願いを、きちんと叶えてあげなければ」という、責任の重さを感じるかもしれません。
その故人の最後の願いを、どうすれば、温かく、そして、確実なかたちで実現できるのでしょうか。 ご遺族の皆様の、そのお気持ちに寄り添いながら、お寺の視点から、いくつかのヒントをお伝えします。
まず、その「迷わなくて済む」という、最後の贈り物に感謝を
エンディングノートに法事の希望が記されている。 それは、あなた方ご遺族にとって、故人が遺してくれた、何物にも代えがたい「最後の贈り物」です。
もし、このノートがなければ、あなた方は、「法事は、いつまでやればいいのだろう」「誰を呼べば、故人は喜ぶだろうか」と、暗中模索し、時には、ご親族の間で意見が対立して、心を痛めていたかもしれません。
故人は、あなた方に、そんな苦労をさせたくなかったのです。 その深い配慮と愛情に、まずは、心からの感謝の念を持って、そのページと向き合うこと。それが、故人の想いを叶える、第一歩となります。
故人の希望を、そのまま叶えることが、最高のご供養
ご供養で最も大切なのは、遺された者が「こうあるべきだ」と考えることよりも、故人自身が「こうしてほしい」と願った、その想いを尊重することです。
- 「家族だけで、ささやかに」とあれば… ご親戚から「もっと盛大にやるべきだ」という声があったとしても、故人の「ささやかに」という希望を、大切にしてあげてください。「故人の遺志ですので」と伝えれば、きっとご理解いただけるはずです。故人の価値観を尊重することが、最高の供養となります。
- 「友人たちにも、声をかけてほしい」とあれば… 連絡先のリストが添えられていたら、ぜひ、その方々へ、丁寧にご案内を差し上げてください。故人が、人生の最後にもう一度会いたいと願った、大切なご縁です。そのご縁を、法事という場で繋ぎ直してあげることが、素晴らしいご供養となります。
- お寺の指定があれば、まず相談を もし、「法要は、愛知県小牧市の祥雲寺で」というように、具体的なお寺の名前が記されていれば、故人は、そのお寺に、特別な信頼やご縁を感じておられたはずです。まずは、そのお寺に連絡を取り、「故人が、このような希望を遺しておりまして」と、ご相談されるのが、最も確実な道です。
もし、希望の解釈に迷ったら…
時には、「心のこもった法事を」というように、希望が、少し漠然と書かれていることもあるかもしれません。 そんな時、ご家族の間で「心のこもった、とは、どういう意味だろう」と、解釈に迷いが生まれることもあります。
そのような場合もまた、故人が信頼を寄せていたお寺にご相談ください。 私たち聖職者は、日々、様々なご供養に携わる中で、多くの「故人の想い」に触れています。皆様のお話をお伺いし、故人のお人柄などを偲びながら、「故人様にとっての『心のこもった法事』とは、きっと、このようなかたちではないでしょうか」と、具体的なご提案をさせていただくことができます。
おわりに
一冊のエンディングノートに込められた、故人の最後の願い。 その願いを、ご遺族が、愛情と敬意をもって、一つひとつ、丁寧にかたちにしていく。そのプロセスそのものが、故人との、美しく、そして、温かい最後の対話となります。
私たち祥雲寺は、その尊い対話の、お手伝いをさせていただきます。 故人が遺されたエンてディングノートを手に、どうぞ、いつでもご相談にお越しください。その文字に込められた想いを、最高の「ご供養」として、一緒に実現してまいりましょう。